2001年7月17日

ハンセン病に関する謝罪

 ハンセン病訴訟熊本地裁判決、そして政府の控訴断念は、一世紀に及ぶ隔離施策から人間としての解放を求め続けた原告及び支援者各位の勇気に満ちた運動の成果であります。これは、全国13の療養所に現在もなお入所されている方々、差別や偏見を恐れて真の社会復帰を図れずにいる退所者や患者家族、また死してなお故郷に帰れず納骨堂に眠る諸精霊及びその遺族、そしてこの世に生を受けることなく逝った胎児など、ハンセン病政策によるすべての被害者にとって人間回復のための歴史的な第一歩であります。 政府は、今日まで人権上の制限や差別によって患者や元患者が受けた苦痛、苦難に対し心から謝罪し、全面的解決のために立法措置を講ずることを約束いたしました。

 さて、私たちは、国の隔離政策に対して何ら批判することもなく、容認してきたのであります。今、元ハンセン病患者やその家族が長い年月にわたって受けてきた苦しみを思うとき、本来救いとしての教えであるにもかかわらず、あきらめをうながす慰め的な内容を説いてきたこと、それによって差別や偏見を温存助長してきた大きな誤りを自覚せざるを得ません。 また世間から隔離されたり、時には閉じ込められたり、親子、兄妹の名乗りもできず、故郷に骨を埋めることすら叶わなかった無念を想うとき、心は痛み、申し訳なく、慙愧に耐えないところであります。 我が教団として、元患者の方々をはじめ家族・関係者に対し、苦しみを共有することも無く、差別を温存助長する過ちを犯してきたことに対し、深く反省懺悔するとともに、心から謝罪するところであります。 今回の訴訟問題を契機として、私たち浄土宗教団においても過去の同じ過ちを繰り返すことなく宗祖法然上人の御心を体し、本宗挙げてあらためて真摯に学習をすすめていくことを固く誓うものであり、そして、元ハンセン病患者の皆様をはじめ、またそのご家族及び関係者が差別と偏見から解放される明るい社会の実現を目指し、立ち上がることをお誓いし、謝罪といたします。